「毎月そこそこ貯めているつもりだけど、ペースとして適切なの?」——この疑問に答えてくれるのが貯蓄率です。貯蓄率は手取り収入のうち何割を貯められたかを表すシンプルな指標で、家計の健全さを一目で測れます。この記事では、貯蓄率の計算方法、目安、そして貯蓄率を効率よく上げるコツを解説します。

貯蓄率は、手取り収入のうち使わずに残せた割合です。
たとえば手取りが月25万円で、5万円を貯蓄に回せたなら、貯蓄率は20%です。注意したいのは、ここでの「収入」は額面ではなく手取り(税・社会保険料を引いたあと)を使うこと。額面で計算すると実態より高く出てしまいます。
総務省「家計調査」には、この記事の貯蓄率とほぼ同じ定義の指標があります。黒字率です。黒字=可処分所得−消費支出、黒字率=黒字÷可処分所得。分子・分母とも本記事の式と一致します。
2024年平均の二人以上の世帯のうち勤労者世帯(平均世帯人員3.23人、有業人員1.81人、世帯主の平均年齢50.5歳)は次のとおりでした。
| 世帯主の年齢 | 可処分所得 | 消費支出 | 黒字 | 黒字率 |
|---|---|---|---|---|
| 40歳未満 | 516,522円 | 280,544円 | 235,978円 | 45.7% |
| 40〜49歳 | 571,000円 | 331,526円 | 239,474円 | 41.9% |
| 50〜59歳 | 569,251円 | 359,951円 | 209,300円 | 36.8% |
| 60歳以上 | 410,039円 | 308,660円 | 101,379円 | 24.7% |
| 平均 | 522,569円 | 325,137円 | 197,432円 | 37.8% |
よく言われる「20〜30%」より、実測はかなり高い数字です。ただし条件を見てください。この勤労者世帯は有業人員が平均1.81人(=共働きが多い)で、持家率82.5%です。住宅ローンの元本返済は消費支出に含まれない扱いなので、その分だけ黒字率は高く出ます。単身・賃貸の人がそのまま比較する数字ではありません。
黒字の中身も見ておくと示唆的です。黒字197,432円のうち預貯金純増が175,241円を占め、有価証券純購入は6,705円にとどまります。「みんな投資している」という印象とは裏腹に、現役世帯が貯めているものの大半はいまも預金です。
ニュースで「家計貯蓄率」を見たことがあるかもしれません。内閣府の国民経済計算(GDP統計)による2024年度(令和6年度)の家計貯蓄率は0.8%でした。前年度の−0.5%から1.3ポイント上昇し、4年ぶりのプラスです。
| 年度 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
|---|---|---|---|---|---|
| 家計貯蓄率 | 10.6% | 4.9% | 0.9% | −0.5% | 0.8% |
37.8%と0.8%。同じ「貯蓄率」という言葉で40倍以上の開きがあります。どちらかが誤りなのではなく、測っているものが違います。
つまり「日本人は貯蓄しなくなった」という報道を見ても、それは現役世帯の家計の話とは限りません。自分の貯蓄率の比較先としては、家計調査の黒字率のほうが近い指標です。
実測値を踏まえた目安です。家計調査の勤労者世帯は共働き・持ち家が多いため、条件を揃えて考える必要があります。
| 状況 | 貯蓄率の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 単身・賃貸 | 15〜25% | 家賃が丸ごと消費支出に乗るため、勤労者世帯平均より低くて当然 |
| 共働きで子どもなし | 30〜40% | 40歳未満の勤労者世帯の実測が45.7%。二馬力ならこの水準は射程に入る |
| 子育て世帯 | 20〜30% | 50〜59歳の実測36.8%より低くなりやすい。教育費のピーク期は10%台でも異常ではない |
| 60歳以降 | 20%前後 → 退職後はマイナス | 60歳以上の勤労者世帯は24.7%。無職になると−11.2%=取り崩し期に入る |
大切なのは他人と比べることではなく、去年の自分より貯蓄率が上がっているかという視点です。まずは現状の貯蓄率を把握し、そこから1〜2ポイントずつ改善するのが現実的です。
なお、手取りが少ないうちは「率」より「貯める習慣」を優先して構いません。手取り18万円の10%(1.8万円)と手取り40万円の10%(4万円)では金額がまったく違いますが、収入が増えたときに貯蓄率を保てるかどうかは、少額の時期に作った習慣でほぼ決まります。貯蓄率は家計の健全さを測るための物差しであって、他人と競うための点数ではありません。
貯蓄率を上げようとすると、つい食費や娯楽を我慢しがちですが、効率がいいのは固定費の見直しが先です。
「貯める前に使ってしまう」のを防ぐには、給料が入ったらすぐ一定額を別口座へ移す先取り貯蓄も効果的です。残ったお金で生活すれば、貯蓄率が自然と安定します。
先取りの金額は、最初は「これなら絶対に苦しくない」と思える額(手取りの5〜10%)から始めるのが長続きのコツです。その額で3ヶ月問題なく生活できたら1〜2ポイント上げる、を繰り返すほうが、最初から高い目標を立てて挫折するより1年後の貯蓄率は高くなります。
貯蓄率の分子である「貯蓄額」には、預金の増加だけでなく、使わずに資産へ回したお金を広く含めて考えます。
| 含める | 含めない |
|---|---|
| 預金の増加額 NISA・iDeCo・投資信託への拠出(支出ではなく資産への移動) 住宅ローンなど負債の元本返済(純資産を増やす) | ローンの利息・手数料(純粋な支出) 株価の値上がりなど評価益(自分で貯めたお金ではない) |
投資への拠出を「支出」として扱うと、実際より貯蓄率が低く見えます。逆に、値上がりで資産が増えた分まで貯蓄に数えると家計の実力を過大評価します。自分の手で資産に回した額だけを数えるのがコツです。
手取り月25万円の場合、貯蓄率ごとの累計は次のようになります(運用益は考えない単純な積み上げです)。
| 貯蓄率 | 月の貯蓄 | 1年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| 10% | 25,000円 | 30万円 | 300万円 |
| 20% | 50,000円 | 60万円 | 600万円 |
| 30% | 75,000円 | 90万円 | 900万円 |
貯蓄率が10ポイント違うと、10年で300万円の差になります。数ポイントの改善でも、長期では生活防衛資金や住宅の頭金に相当する差が生まれます。
逆に言えば、焦って一気に30%を目指す必要はありません。10%→12%→15%と階段を上るように上げていけば、同じ地点に無理なくたどり着けます。
貯蓄率を正確に測るうえで見落としがちなのが、借金の返済や負債の増減です。預金が5万円増えても、同じ月にカードの未払いが5万円増えていたら、正味では貯められていません。そこで役立つのが、純資産の増減で見る考え方です。月初から月末で純資産がいくら増えたかを手取りで割れば、負債も織り込んだ「ほんとうの貯蓄率」が分かります。
年間の貯蓄率を見るなら含めます。ただしボーナス頼みの家計は支給が減ったときに崩れやすいため、「月の貯蓄率」だけでも黒字を保てているかを別に確認するのがおすすめです。
含めます。支出ではなく資産への移動だからです。ただし評価額の値上がり分は「自分で貯めた額」ではないので、貯蓄率の計算からは除きます。
総務省「家計調査」2024年平均では、二人以上の世帯のうち勤労者世帯の黒字率(=貯蓄率)は37.8%でした。年齢別では40歳未満45.7%、40〜49歳41.9%、50〜59歳36.8%、60歳以上24.7%です。ただしこの世帯は有業人員1.81人・持家率82.5%という条件があり、単身・賃貸の人がそのまま比較する数字ではありません。なお内閣府の国民経済計算による2024年度の「家計貯蓄率」は0.8%ですが、これは高齢無職世帯を含む家計部門全体を対象とした別の指標です。
家計調査2024年平均では、二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の黒字率は−11.2%で、可処分所得233,097円に対して消費支出259,295円と、月26,198円を資産から取り崩しています。夫婦高齢者無職世帯の平均消費性向は115.3%、高齢単身無職世帯は122.9%です。現役期に貯蓄率をプラスで維持するのは、この取り崩し期に備えるためという位置づけになります。
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