貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)は企業の決算書というイメージがありますが、家計に当てはめても強力なツールになります。それぞれが何を表すのか、家計の例で読み解いていきましょう。

損益計算書は、ある期間(たとえば1か月)の収入と支出を集計し、差し引きでいくら残ったかを示します。家計でいえば「今月は黒字だったか赤字だったか」がひと目でわかります。
カテゴリ別に支出を見れば、「思ったより外食が多い」「固定費が重い」といった改善のヒントが見つかります。
貸借対照表は、ある時点での資産・負債・純資産のバランスを示します。家計の「健康診断書」のようなものです。
| 区分 | 家計での例 |
|---|---|
| 資産 | 現金、預金、有価証券、保険、住宅など |
| 負債 | クレジットカードの未払い、ローン、借入金 |
| 純資産 | 資産 − 負債(=本当の意味での自分の財産) |
大事なのは純資産です。収入が多くても負債が膨らんでいれば純資産は増えません。逆に支出が多い月でも、資産に回っていれば純資産は守られます。
損益計算書の「収支(黒字)」は、貸借対照表の「純資産の増加」につながります。毎月の黒字を積み上げることが、純資産を増やすこと——つまり家計の健全化に直結します。複式簿記で記録すれば、この2つの表が自動的に整合します。
言葉だけだとイメージしづらいので、あるご家庭の1か月を数字で追ってみましょう。手取り30万円の会社員で、毎月2万円を投資(NISA)に積み立てているケースです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 収入(給与手取り) | 300,000円 |
| 住居費(家賃) | −90,000円 |
| 食費 | −55,000円 |
| 水道光熱・通信 | −25,000円 |
| 日用品・娯楽・その他 | −60,000円 |
| 収支(黒字) | +70,000円 |
この例の支出は合計23万円です。参考までに、総務省「家計調査」2024年平均の消費支出は単身世帯で169,547円、二人以上の世帯で300,243円なので、その中間くらいの水準になります。この月は7万円の黒字でした。ここで大事なのは、NISAへの積立2万円は「支出」に入れないという点です。お金が消えたのではなく、現金という資産から投資という資産へ「移動」しただけだからです。PL(損益計算書)に載るのは、消費・費用として家計の外へ出ていったお金だけです。
あとでBS(次の項)と突き合わせられるように、支払い方法の内訳も控えておきます。支出23万円のうち、家賃9万円は口座振替、残り14万円はクレジットカード払いだったとします。カード払いの14万円は翌月の引き落としなので、今月はまだ預金から出ていきません。
次に、月末時点の財産を並べます。先月末の純資産は 250万円だったとします。今月は株価が上がり、NISAに1万円の含み益(評価益)が出ました。
| 資産 | 金額 |
|---|---|
| 現金・普通預金 | 1,490,000円 |
| 投資(NISA評価額) | 1,230,000円 |
| 資産合計 | 2,720,000円 |
| 負債 | 金額 |
|---|---|
| クレジットカード未払い | 140,000円 |
| 負債合計 | 140,000円 |
純資産=資産 2,720,000 − 負債 140,000 = 2,580,000円。先月末の250万円から、8万円増えました。
今月の預金の動きを追うと、こうなります。給与 +30万円/家賃 −9万円/先月分のカード引き落とし −20万円/NISA積立 −2万円。差し引き1万円の減少です。今月のカード払い14万円は翌月引き落としなので、今月はまだ預金から出ていきません。
費用が発生した月と、現金が動く月がずれているためです。今月のカード払い14万円は費用として計上済みですが、現金はまだ出ていません。逆に先月分20万円の引き落としは現金が出ましたが、これは負債の精算であって費用ではありません。つまり今月は20万円払って14万円使ったので、カードの未払いは6万円減りました。
この時間差で6万円、さらにNISAへの積立2万円(資産の移動であって支出ではない)が加わって、合計8万円、黒字7万円と預金の動き(−1万円)がずれます。
ここが、家計にBS・PLの両方を使うおもしろさです。今月の純資産の増加8万円は、こう分解できます。
| 項目 | 残高の増減 | 純資産への寄与 |
|---|---|---|
| 現金・普通預金 | −10,000円 | −10,000円 |
| NISA(積立2万+含み益1万) | +30,000円 | +30,000円 |
| カード未払い(負債) | −60,000円 | +60,000円(負債が減ると純資産は増える) |
| 合計 | — | +80,000円 |
※ 引き落とし20万円は預金も同額減っており、その分は預金の行に入っています。未払いの6万円減は、今月の利用14万円が未払いとして残ったことによる差額です。
つまり「今月いくら使ったか(PL)」と「財産が結局いくら増えたか(BSの純資産)」は別物で、両方を見て初めて家計の実態がわかります。支出管理だけの家計簿では、投資に回した分や評価益が見えないため、「黒字なのにお金が増えた気がしない」「赤字なのに実は資産は増えていた」といったズレが起きがちです。
費用が発生した月と現金が動く月がずれているためです。クレジットカードの利用は使った月に費用として計上されますが、預金から出ていくのは翌月です。逆に前月分の引き落としは現金が出ても費用ではありません。加えて、投資への積立は支出ではなく資産の移動なので、黒字でも預金は減ります。PL(もうけ)とBS(財産の中身)を分けて見ると、この理由が数字で分かります。
収支トントンを目指すだけならPL(家計簿)で十分です。ただ「老後までにいくら貯まるか」「投資も含めて財産が増えているか」を知りたいなら、BS(純資産)まで見ないと判断できません。両方あって家計の全体像が見えます。
PLは毎月、BSは月末に1回で十分です。投資の評価額は月1回まとめて更新する程度で問題ありません。毎日つける必要はありません。
手計算だと大変ですが、複式簿記で記帳できるアプリを使えば、入力からBS・PLが自動生成されます。kurofukubo は「かんたん入力」や「一行入力」に対応しており、簿記を知らなくても記録できます。

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