共働き夫婦の家計管理には「正解」と呼べる唯一の方法はなく、財布を分ける派・共有口座を作る派などパターンはさまざまです。ただしどの方法を選んでも、住宅ローンをペアローンで組んだ場合を含め、共通して起きやすい落とし穴があります。それが「世帯としての純資産を誰も把握していない」状態です。

家計管理の方式を選ぶ前に、確認しておきたい事実があります。内閣府「男女共同参画白書」令和7年版(労働力調査ベース、妻が64歳以下の世帯)の2024年の数字です。
| 世帯の型 | 1985年 | 2024年 | 40年間の変化 |
|---|---|---|---|
| 男性雇用者と無業の妻から成る世帯 | 936万世帯 | 398万世帯 | 約4割に減少 |
| 共働き(妻がパートタイム=週35時間未満) | 228万世帯 | 694万世帯 | 約3.0倍に増加 |
| 共働き(妻がフルタイム=週35時間以上) | 461万世帯 | 527万世帯 | 約1.1倍(近年は増加傾向) |
共働き世帯は合計1,221万世帯で、いわゆる専業主婦世帯398万世帯の約3.1倍です。ここまではよく知られた話ですが、注目したいのは内訳のほうです。
収入面でも同じ傾向が出ています。総務省「家計調査」2024年平均の二人以上の世帯のうち勤労者世帯(有業人員1.81人)では、月あたりの世帯主収入461,446円に対し、世帯主の配偶者の収入は104,762円でした。配偶者の収入は世帯主収入の22.7%、世帯全体の実収入636,155円に対しては16.5%です。
この前提は家計管理の方式選びに直結します。ネット上の「財布は分けるべきか」という議論は、暗黙のうちに二人の収入が近い前提で語られがちです。しかし実際の共働きの多数派は収入差が大きく、その場合に「項目を折半する」方式は、収入の少ない側に重い負担を課すことになります。
共働き夫婦の家計管理は、大きく分けて次のようなパターンがあります。どれが優れているというより、収入差や価値観に合わせて選ばれています。上の数字を踏まえると、収入差が大きい夫婦ほど「収入割合で負担する共有口座制」が現実的で、収入が近い夫婦ほど項目分担制や完全別財布が成立しやすい、という関係になります。
| 方式 | 内容 | 向いている夫婦 |
|---|---|---|
| 項目分担制 | 「家賃・光熱費は夫、食費・日用品は妻」のように支払う項目を分ける | それぞれの支出管理を尊重したい夫婦 |
| 共有口座制 | 決めた金額(または収入割合)を共有口座に入れ、そこから生活費を払う | 生活費の負担割合を明確にしたい夫婦 |
| 一方が家計を管理 | 片方に生活費を渡し、その人がまとめて管理・支払いする | 管理を1人に集約したい夫婦 |
| 完全共有 | 収入をすべて合算し、そこから全支出を払う | お金の透明性を重視する夫婦 |
| 完全別財布 | 生活費も個別に負担し、家計をほぼ合わせない | お互いの経済的独立を重視する夫婦 |
財布を分けること自体は悪いことではありません。問題は、分けたまま何年も過ごすうちに、夫の口座・妻の口座・それぞれのクレジットカード・証券口座・古い銀行口座……とお金が複数の場所に分散し、「我が家の純資産はいくらか」を即座に答えられる人が家庭に誰もいないという状態になりやすいことです。
特に、支払う項目を分担してそれぞれが自分の財布で払う方式は、日々の支出は回っていても「世帯として今どのくらい資産があり、どのくらい負債(住宅ローンなど)が残っているか」が見えにくくなりがちです。
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(2024年10月〜2025年3月に住宅ローンを借り入れた1,397人、調査は2025年4月30日〜5月12日)によると、利用実態は次のとおりです。
→ 住宅ローンを含めた純資産の出し方は 本当の純資産の出し方 へ。
| 区分 | 今回 | 前回調査 |
|---|---|---|
| ペアローンを利用した | 25.9% | 26.4% |
| 収入合算を利用した | 13.4% | 12.6% |
| どちらも利用していない | 60.7% | 61.0% |
ペアローンまたは収入合算の利用は合わせて39.3%。借入者の約4割が、単独ではなく夫婦の収入を前提に住宅を買っています。さらに年代別に見ると、傾向がはっきり分かれます。
| 年代 | 回答数 | ペアローン | 収入合算 | どちらも利用せず |
|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 234 | 44.0% | 23.1% | 32.9% |
| 30〜39歳 | 604 | 29.6% | 12.3% | 58.1% |
| 40〜49歳 | 374 | 14.7% | 9.6% | 75.7% |
| 50〜69歳 | 185 | 13.5% | 12.4% | 74.1% |
20代では44.0%がペアローンを利用しています。40代以降の14.7%・13.5%と比べると3倍の水準です。住宅価格の上昇に対して、若い世代ほど二人分の与信を使わないと届かなくなっている——そう読める数字です。
ここで前半の話とつながります。ペアローンは双方に安定した収入が必要なため、成立するのはフルタイム共働き(共働き世帯の43.2%)の層に偏ります。つまり「共働きだからペアローン」ではなく、「フルタイム共働きだからペアローンが選べる」という関係です。そして片方がパートに移るなどで働き方が変われば、返済計画の前提が崩れます。
住宅ローンをペアローンで組むと、夫婦それぞれが独立したローン契約者になります。それぞれが自分に合った返済方法(固定金利・変動金利、返済期間)を選べるのが利点ですが、契約が2本に分かれる分、次の点を見落としやすくなります。
財布の管理方法をどれにするかは夫婦の自由ですが、月に一度でも「世帯としての資産・負債」を1枚にまとめて見る習慣があると、上記の落とし穴を避けられます。具体的には次のようなものを一覧にします。
→ 世帯で1枚にまとめる手順は 家族のバランスシートの作り方 にまとめています。
分けること自体は問題ではありません。ただし、完全に別財布のまま何年も過ごすと「世帯としての純資産」を誰も把握していない状態になりやすいのが注意点です。財布は別でも、資産・負債の状況だけは定期的に1枚にまとめて共有するのがおすすめです。
夫婦それぞれが別々に住宅ローン契約を結ぶ方式です。それぞれが自分の返済方法(固定・変動、返済期間)を選べる一方、事務手数料や保証料も2契約分かかり、団体信用生命保険も原則それぞれの契約分にしか適用されません。
支払う項目ごとに分担し、それぞれが自分の財布で払う方式は、お互いの支出が見えず、家計全体でいくら使い、いくら残っているかを把握しづらくなります。特に収入差がある場合、項目を折半すると収入の少ない側の負担が重くなります。家計調査2024年では世帯主の配偶者の収入は月104,762円で、世帯主収入461,446円の22.7%です。負担は金額の折半ではなく収入割合で決めるほうが、実態に合うことが多くなります。
内閣府「男女共同参画白書」令和7年版(労働力調査ベース、妻が64歳以下の世帯)の2024年の数字では、雇用者の共働き世帯は妻がパートタイム694万世帯・妻がフルタイム527万世帯の合計1,221万世帯で、男性雇用者と無業の妻から成る世帯398万世帯の約3.1倍です。ただし共働き世帯の56.8%は妻がパートタイムで、フルタイム同士は43.2%にとどまります。
住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査」(2024年10月〜2025年3月に借入、n=1,397)では、ペアローンの利用が25.9%、収入合算が13.4%で、合わせて39.3%でした。年代別では20〜29歳のペアローン利用が44.0%と最も高く、40〜49歳の14.7%、50〜69歳の13.5%と比べて3倍の水準です。
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無料で始める共働き世帯の内訳比率(56.8%/43.2%)および配偶者収入の対世帯主収入比(22.7%)は、上記の公表値から当サイトが算出しました。白書の集計は「妻が64歳以下の雇用者世帯」に限った数字で、自営業世帯などは含みません。
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